βをどう推定すべきか

βの必要性

企業価値評価をDCF法で行う際、加重平均資本コスト(以下WACC)を利用します。WACCのうち自己資本コストの算定方法にはいくつかありますが、最も良く使われる代表的な算出方法として資本資産価格モデル(Capital Asset Pricing Model:以下CAPM)を使って算定する方法があります。

CAPMにおける「投資家の要求収益率」を自己資本コストとし、マーケットリスクプレミアムの係数をβ(ベータ)とします。

ここで「βをどう算出するか?」という問題が生じます。

β算出の問題点

一般的に、βは過去5年または10年におけるマーケットリターンと対象銘柄リターンから以下のように算出します。

β = 対象銘柄のリターンとマーケットリターンの利回りの共分散 ÷ 対象銘柄のリターンの分散

これは線形の回帰分析を行っていることと同義です。

このように算出されるβはヒストリカルβとも呼ばれますが、過去における回帰が正しいか、将来も同じ傾向であると言えるのか、非上場企業では算出できないなどの問題点があります。

なお単純に回帰分析するだけでなく、sumベータ法やベイジアン修正など補正する方法はありますが、根本的には上記の問題点を孕んでいます。

他のβ算出方法

実際には先に述べたヒストリカルβ以外のβを考慮しながら、特定の方法に固執せず分析に利用することが多いです。

代表的なものとして業種ヒストリカルβであり、これは同じ業種を平均した数値です。

業種ヒストリカルβのメリットは業種ごとの違いをうまく捉えられる点にあります。

他の方法としてファンダメンタルβがあります。

ファンダメンタルβはCAPMの拡張と言えるマルチファクターモデルにおけるファクターエクスポージャーを使うものです。

ただしこの方法は一般的には半年〜2年程度の短期間のデータから算出するため、自己資本コスト推定に使うには適切でないという意見もあります。

算出したβの捉え方

ここまで述べてきたように、βを「正しく」見積もるには限界があります。

β自体の見積もりを改善する上で、CAPMを使った方法に限界がある点は認識すべきでしょう。

次回はCAPMを利用しない自己資本コストの算定を紹介していきます。

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