飯野海運の決算短信<2025年３月期　第３四半期決算短信〔日本基準〕（連結）>銘柄分析

1. 環境分析

飯野海運株式会社は、外航海運業、内航・近海海運業、不動産業の3つのセグメントで構成されている。

当該企業は以下の環境に置かれている。
・競争における需要の状況：外航海運業では、紅海情勢の影響で船腹需給が逼迫しており、ケミカルタンカーの需要は高い水準を維持している。一方で、大型原油タンカーは中国向けの荷動きが低迷しており、需要が減少している。内航・近海海運業では、内需の冷え込みが影響しつつも、船腹需給の逼迫により安定した需要が見込まれている。不動産業では、東京都心のオフィスビル賃貸市況が改善しており、安定した収益が確保されている。
・競争における供給の状況：外航海運業では、新造船の竣工が限定的であり、供給が需給バランスを保っている。内航・近海海運業では、新造船の供給が少なく、需給が安定している。不動産業では、新築大型ビルへの集約移転が進んでいるが、全体的な供給は安定している。
・既存競合他社について：外航海運業では、競合他社も同様の市場環境にあり、特にケミカルタンカー市場では競争が激化している。内航・近海海運業では、競合他社との価格競争が見られるが、安定した契約に基づく収益確保が鍵となる。不動産業では、特に高グレードなビルの需要が堅調で、競争が続いている。
・新規参入企業について：新規参入企業の動向は限定的であり、特に外航海運業では高い参入障壁が存在するため、新規参入は難しいと考えられる。内航・近海海運業でも同様の傾向が見られる。
・代替品について：代替品の影響は少ないが、特に内航・近海海運業では、他の輸送手段（トラック輸送など）との競争が存在する。

2. 当期業績の内容

2025年3月期第3四半期の業績は、売上高108,735百万円（前年同期比5.1％増）、営業利益13,744百万円（前年同期比4.1％減）、経常利益14,217百万円（前年同期比6.6％減）、親会社株主に帰属する四半期純利益14,181百万円（前年同期比5.9％減）となった。売上高は増加したものの、営業利益と経常利益は減少した。これは、外航海運業における大型原油タンカーの市況低迷や、営業費用の増加が影響している。業績予想との乖離は見られない。

3. 次期業績予想の内容

2025年3月期の業績予想は、売上高143,000百万円（前年比3.7％増）、営業利益16,600百万円（前年比12.9％減）、経常利益16,900百万円（前年比22.5％減）、親会社株主に帰属する当期純利益17,200百万円（前年比12.9％減）である。リスク要因としては、大型ガス船の稼働減少や一部船舶の市況低下が挙げられるが、事業投資からの受取配当金の増加が期待されている。

4. 投資に関する事項

配当については、2025年3月期の期末配当金は普通配当24円00銭、特別配当5円00銭の合計29円00銭を予定している。これは、業績予想に変更がないことから据え置かれたものであり、年間配当金は54円00銭となる。配当性向は30％を基準としており、安定した株主還元を目指している。

5. 株価予想

向こう3ヶ月以内の株価変化は「横ばい」と予想される。業績が当期の業績予想と同水準であり、次期業績成長率が当期実績の成長率と同水準であるため、株価の反応は横ばいであると考えられる。